精選版 日本国語大辞典 「一」の意味・読み・例文・類語
ひと【一】
[1] 〘名〙 物の数を、声に出して順に唱えながら数えるときの一(いち)。ひい。ひ。
※年中行事秘抄(12C末)鎮魂祭歌「一(ヒト)二(ふた)三(み)四(よ)」
① 物事の数がひとつであること、または一回分であることを表わす。「ひと足」「ひと冬」「ひと勝負」「ひと浜」など。
② ひとつのもの全体に満ちている、または、全体に及ぶ意を表わす。…にいっぱい。…全体。…じゅう。「ひと鍋」「ひとかかえ」「ひと晩」など。
※枕(10C終)八二「日ひとひ下(しも)に居くらしてまゐりたれば」
③ 不特定のある一点を漠然とさして表わす。ある。
※枕(10C終)一三六「ひとひの文に、ありし事など語り給ふ」
④ 一応その範疇にはいる意、またちょっとしたものである意を表わす。ひとかどの。いちおうの。
⑤ (「ひと…(…)する」の形で) その動作を一応する、一通りする意を表わす。ちょっとの。また、ひとしきりの。「ひと苦労する」「ひと泡ふかす」「ひと旗あげる」「ひとかせぎする」など。なお、この後半を略して「ひと…」の形だけでいうことも多い。
※太平記(14C後)一七「其矢〈略〉本堂の艮(うしとら)の柱に一ゆりゆりて、くつまき過てぞ立たりける」
⑥ (「ひと…に…する」の形で) その動作が一回だけで終わる、一回だけで完全に行なわれる意を表わす。一回だけの。一度だけの。また、いっきの。ひといきの。「ひと筆に書く」「ひと打ちに打ちのめす」など。なお、この後半を略して「ひと…」の形だけでいうことも多い。
※伊勢物語(10C前)六「おにはやひとくちに食ひてけり」
イー【一】
ひ【一】
※名語記(1275)四「一二三四五六七八九十をひふとて、手に石ふたつをもちてかはりがはりたまにとるに、ひふみよいむなやこと、といへるは」
いっち【一】
〘副〙 (「いち(一)」を強めていった語) ものの程度や状態が、最もはなはだしいさま。第一。最も。いちばん。
※百丈清規抄(1462)二「極遅六十劫とて一(イッ)ちをそいぞ」
※六物図抄(1508)「最も居レ下故とは三衣の中にて位がいっちの下也」
ひい【一】
〘名〙 「ひ(一)」の変化した語。物の数を、声に出して順に唱えながら数えるときの一。ひ。ひと。
※俳諧・西鶴五百韻(1679)何鞠「君か代は長の数よむひいふうみい〈西鶴〉 たはね木をつむ高き屋の内〈西吟〉」
いいち【一】
〘副〙 第一に。一番に。最上の。いっち。いち。
※狂言記・法師物狂(1660)「いいちひとの見めのよきは」
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