デジタル大辞泉
「一」の意味・読み・例文・類語
いち【一/壱】
[名]
1 数の名。自然数で最初の数。ひとつ。
2 いちばん初め。1番目。「―の鳥居」
3 物事の最初。「―から出直す」
4 最もすぐれていること。最上。最高。「―の子分」「世界―」
5 三味線などで、いちばん音の低い太い糸。一の糸。
6 島田髷などの後ろに張り出た部分。
「菊千代は潰島田の―を気にしながら色気のない大欠」〈荷風・腕くらべ〉
[副]いちばん。最も。いっち。
「木ねりと申して、―うまい柿でござる」〈虎寛狂・合柿〉
[補説]「壱」は、主に証書などに金額を記すときまちがいを防ぐために、「一」の代わりに特に用いる。
[類語]二・三・四・五・六・七・八・九・十・百・千・万・億・兆・ゼロ・零・一つ・二つ・三つ・四つ・五つ・六つ・七つ・八つ・九つ・十
ひと【一】
1 ひとつ。いち。
2 (名詞や動詞の連用形の上に付いて)
㋐一つ、または1回の意を表す。「一包み」「一勝負」
㋑不特定の一時期や大体の範囲などを表す。「一ころ」「一わたり」「一通り」
㋒ちょっとしたものであることを表す。「一かど」「一くせ」
㋓全体に及ぶさまを表す。全部。…中。「一皿たいらげる」「一夏を山荘で過ごす」
㋔(「ひと…する」の形で)軽くある動作を行う、あることをひととおりする意を表す。「一眠りする」「一風呂浴びる」
いつ【一/▽壱】
1 ひとつ。
「ここに―の秘法を案出致し候」〈漱石・吾輩は猫である〉
2 同じこと。まとまっていること。「軌を―にする」「心を―にする」
3 一方。あるもの。別なもの。「―は甘く、―は苦い」
4 (「いつに」の形で副詞的に用いて)もっぱら。ひとえに。「成否は―に現在の努力にかかっている」
ひ【▽一】
いち。ひとつ。声に出して数をかぞえるときの語。ひい。「一、ふ、み、よ」
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
ひと【一】
[1] 〘名〙
物の数を、声に出して順に唱えながら数えるときの一
(いち)。ひい。ひ。
※
年中行事秘抄(12C末)鎮魂祭歌「一
(ヒト)二
(ふた)三
(み)四
(よ)」
[2] 〘語素〙 (名詞・
助数詞または動詞の連用形の上に付けて用いる)
① 物事の数がひとつであること、または一回分であることを表わす。「ひと足」「ひと冬」「ひと勝負」「ひと浜」など。
※
古事記(712)上・
歌謡「山処
(やまと)の比登
(ヒト)本薄
(すすき)、うなかぶし汝が泣かさまく」
※
源氏(1001‐14頃)
夕顔「ひとふさ折りてまゐれ」
② ひとつのもの全体に満ちている、または、全体に及ぶ意を表わす。…にいっぱい。…全体。…じゅう。「ひと鍋」「ひとかかえ」「ひと晩」など。
※枕(10C終)八二「日ひとひ下(しも)に居くらしてまゐりたれば」
③ 不特定のある一点を漠然とさして表わす。ある。
※枕(10C終)一三六「ひとひの文に、ありし事など語り給ふ」
※
平家(13C前)二「一とせ
山門の
訴訟によってながされしを」
④ 一応その
範疇にはいる意、またちょっとしたものである意を表わす。ひとかどの。いちおうの。
※
太平記(14C後)一五「一
(ヒト)面目に備んと攻
(せめ)戦ふ」
⑤ (「ひと…(…)する」の形で) その動作を一応する、一通りする意を表わす。ちょっとの。また、ひとしきりの。「ひと苦労する」「ひと泡ふかす」「ひと旗あげる」「ひとかせぎする」など。なお、この後半を略して「ひと…」の形だけでいうことも多い。
※
万葉(8C後)一八・四〇七七「わが背子が古き
垣内(かきつ)の桜花いまだ含
(ふふ)めり比等
(ヒト)目見に来ね」
※太平記(14C後)一七「其矢〈略〉
本堂の艮
(うしとら)の柱に一ゆりゆりて、くつまき過てぞ立たりける」
⑥ (「ひと…に…する」の形で) その動作が一回だけで終わる、一回だけで完全に行なわれる意を表わす。一回だけの。一度だけの。また、いっきの。ひといきの。「ひと筆に書く」「ひと打ちに打ちのめす」など。なお、この後半を略して「ひと…」の形だけでいうことも多い。
※伊勢物語(10C前)六「おにはやひとくちに食ひてけり」
イー【一】
〘名〙 「一」の中国音。いち。ひとつ。江戸時代には拳(けん)の用語として用いられ、現代ではマージャン用語として用いられる。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「真(ほんとう)の拳(けん)と云ふ物は一(イイ)二(りゃん)三(さん)四(すう)五(うう)六(りう)七(ちゑい)八(ぱま)九(くゎい)といふものだっサ」
ひ【一】
〘名〙 (「ひと(一)」の頭の音を符丁のようにしたもの) 物の数を、声に出して順に唱えながら数えるときの一。実際に唱えるときには普通は「ヒーフーミーヨー」のように長く発音する。ひい。→
ひい(一)。
※名語記(1275)四「一二三四五六七八九十をひふとて、手に石ふたつをもちてかはりがはりたまにとるに、ひふみよいむなやこと、といへるは」
いっち【一】
〘副〙 (「いち(一)」を強めていった語) ものの程度や状態が、最もはなはだしいさま。第一。最も。いちばん。
※百丈清規抄(1462)二「極遅六十劫とて一(イッ)ちをそいぞ」
※六物図抄(1508)「最も居レ下故とは三衣の中にて位がいっちの下也」
ひい【一】
〘名〙 「ひ(一)」の変化した語。物の数を、声に出して順に唱えながら数えるときの一。ひ。ひと。
※俳諧・西鶴五百韻(1679)何鞠「君か代は長の数よむひいふうみい〈西鶴〉 たはね木をつむ高き屋の内〈西吟〉」
いいち【一】
〘副〙 第一に。一番に。最上の。いっち。いち。
※狂言記・法師物狂(1660)「いいちひとの見めのよきは」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
一
三村純也の句集。「はじめ」と読む。2018年刊行(角川文化振興財団)。2019年、第34回詩歌文学館賞(俳句部門)受賞。
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報