精選版 日本国語大辞典 「文」の意味・読み・例文・類語
ぶん【文】
もん【文】
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日常生活では〈文〉と〈文章〉とをあいまいに使うことが多いが,言語学などでは,英語のsentenceにあたるもの(つまり,文字で書くとすれば句点やピリオド・疑問符・感嘆符で締めくくられるおのおの)を文と呼び,文が(あるいは後述の〈発話〉が)連結して内容のあるまとまりをなしたものを文章(テキスト)と呼んで区別する。文とは何かについては,文法学者の数だけ定義があるといわれるほどで,とりわけ日本の国語学では,ただ定義を論じるのみならず,文の文たるゆえんを問おうとするようないささか哲学的な論議も従来から盛んに行われてきた。近年の言語学では,論議を整理すべく,(話し言葉の場合)発せられる1回1回の具体的な音声そのものは文と呼ばずにこれを〈発話utterance〉と呼び,発話の背後に想定しうる抽象的なものとして文をとらえる,という考え方が有力である。たとえば,いろいろな人がいろいろな場面で〈この絵はみごとだ。〉と発することがあろうが,そのそれぞれの発話は,厳密にいうと,音声の細かな特徴がみな少しずつ違うはずで,また具体的に意味するところ--〈この絵〉が具体的に何を指すか,またそう発話する意図は何か(たとえば,買いたいという意思表示か,素朴に所感を述べただけか,暗に他の絵をけなすつもりか)など--にも違いがあろう。が,こうした違いにもかかわらず,これら各発話を音声についても意味についても抽象して,〈この絵はみごとだ。〉という同じ一つの文(抽象物)を背後に想定することができる,と考えるのであり,この文・発話両概念の区別は確かに有益である。もっとも,それにしても,その文という概念をいかに定義するのかが,なお論議の対象になりうるわけだが,おおむね,〈特有のイントネーション(下降や上昇などいくつかの型が抽象される,そのいずれか)で終わること〉および〈完結性(・統一性)があること〉が文の要件としてしばしば指摘されている。
このほか,文の特徴として〈典型的には主語・述語を含む〉という点もあげられようが,ただし,これは文が成立するための要件では決してない。日本語では主語を明示しない文は珍しくないし,英語などヨーロッパ諸言語の文も常に主語・述語を備えているとは限らない。たとえば〈痛い!〉〈Why?〉のように一語で文をなす場合もあるわけで,これを一語文という。
文を構成する成分で,それ自身も文のような性質をもつもの(特に,それ自身が主語・述語を含むもの)を〈節clause〉という(なお,節のことをも文ということがあり,逆に,文全体のことをも節ということがある)。一文を構成する複数の節が構造上対等な関係にあれば,それらを〈等位節〉といい,主従関係にあれば,それぞれを〈主節(主文)〉〈従属節(副文)〉という。従属節にも種々のものがあり,それぞれその機能等によって名詞節,副詞節,関係節等と呼ばれる。節を含まない文(文全体のことをも節というならば〈ただ一つの節から成る文〉ということになる)を〈単文simple sentence〉といい,等位節を含む文を〈重文compound sentence〉,主節・従属節を含む文を〈複文complex sentence〉ということがある。たとえば〈兄が走る。〉は単文,〈兄が走り,弟が追う。〉は重文,〈兄が走れば,弟が追う。〉は複文である。一つの文が多くの節を含み,等位関係や主従関係が幾重にも組み合わせられていることもしばしばである。また,文は,その意味によって,平叙文・疑問文・命令文・勧誘文・感嘆文などに分けることもできる。
文の語順・構造,その他文の有する文法的諸性質に関する研究をシンタクスという。シンタクスは,言語学の中でもとりわけ重要な分野のはずでありながら,長い間研究が不十分であったが,ようやく近年,〈生成文法〉という理論の誕生・発展によって急速に充実してきた。この理論では,文はいわば無定義用語であって,その構築する文法規則の体系によって生成されるものがすなわち文にほかならない(あるいは,文法体系を公理系と見た場合,文は派生される定理にあたるものである)という実にドライな思考法をとり,これがむしろめざましい研究成果をもたらしているといえる。
執筆者:菊地 康人
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銭貨の貨幣単位。1000文を1貫文とする。10文を1疋ともいう。九六銭(くろくせん)のように100文未満の一定数を100文として通用させる省陌(せいはく)という慣行も広く行われた。銭貨1枚1文が原則だったが,江戸時代にはそれ以上の額面で通用する銭貨も発行された。1871年(明治4)円・銭の単位が制定され,貨幣単位としての使用を終えた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…定型や韻律をもった文章,すなわち韻文に対して,定型や韻律にとらわれず,屈折自在で端的に事実を記述する文章をいう。英語のプローズproseにあたるが,その語源はラテン語プロルススprorsusで,〈まっすぐ〉〈平明〉の意である。…
…1950年代中ごろにアメリカの言語学者N.チョムスキーが提唱し,以後,各国の多くの研究者の支持を集めている,文法の考え方。文法とは,〈その言語の文(文法的に正しい文)をすべて,かつそれだけをつくり出す(しかも,各文の有する文法的な性質を示す構造を添えてつくり出す)ような仕組み[=規則の体系]〉であるとし,その構築を目標とする。…
…また,戦後日本の経済力が伸長するにつれてアメリカ,オーストラリア,アジア諸国などの間で,日本と日本語への関心がしだいにに高まってきていると言えよう。
〔現代日本語〕
以下,世界の他の諸言語との比較という観点も含みつつ,現代日本語の主だった特色につきまず略述したのち,さらに音声・音韻,文法等個々の面に即して,やや詳しくまたある部分は体系的な記述・説明を行う。
【概説――日本語の特色】
[音声・音韻面]
日本語では音節(拍)の構造が〈子音+母音〉を基調としているので,母音で終わる〈開音節〉の語が多い。…
…種々の具体的な言語表現(発話)から抽象して設定される,文の構造上のいくつかの類型をいう。(1)文の構造は,これを構成する成分(主語,述語,修飾語,独立語など)間の関係において考えられるが,これら各成分の結びつき方に種々の類型が認められるわけで,英文法で説くS+V,S+V+C,S+V+O,S+V+O+O′,S+V+O+Cという五つの型などもその一例である(Sは主語,Vは動詞,Cは補語,Oは目的語)。…
…一つの文(センテンス)またはある脈絡をもって二つ以上の文の連続したものが,一つの完結体として前後から切り離して取り上げられるとき,これを文章という。文もそれ自体完結したものではあるが,文章の脈絡の中においては,低次の部分をなすにすぎない。…
…日本語文法の用語。〈文を,言語として不自然にならない限りで,最も細かく区切った場合の各部分〉などと定義される。…
…
【概説】
[文法とは]
一般に文法と呼ばれているものは,当該の言語における,(1)単語が連結して文をなす場合のきまり(仕組み)や,(2)語形変化・語構成[派生語や複合語のでき方]などのきまり(仕組み),あるいはまた(3)機能語[助動詞・助詞・前置詞・接辞・代名詞等]の用い方のきまり(仕組み),とほぼいえるであろう。 たとえば,(A)〈ねこがねずみを食べた。…
※「文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...
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