文(ふみ)(読み)ふみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「文(ふみ)」の意味・わかりやすい解説

文(ふみ)
ふみ

書物や文書など文字で書き記してあるものの称。一般的には、文書、記録、日記の類、および漢文典籍などをさす場合が多く、「人の才能は、文あきらかにして、聖(ひじり)の教を知れるを第一とす」(徒然草(つれづれぐさ))などとある。また漢詩、漢文をさし、「思ふままに答へたる対策のふみども、おもしろく興ありて」(うつほ物語)などとあり、さらに、手紙、書簡書状のことをいい、「京に、その人の御もとにとてふみ書きてつく」(伊勢(いせ)物語)などとある。近世になると、手紙でもとくに恋文をいう場合が多くなる。

 学問のことでもあり、平安時代、男性は漢詩・漢文など中国の文学を学ぶことが重要であったため、学問といえばすなわち漢学のこととなり、したがって「文」は中国の文学、漢学をさすものであって、「御ふみのことにつけてつかひ給(たま)ふ大内記なる人」(源氏物語)などとある。

 令(りょう)制の官司の一つで、書籍の保管や図書の書写などを行う図書寮(ふみのつかさ)や後宮の書司(ふみのつかさ)の略称としても用いられた。

[佐藤裕子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例